私たちの日本の花、すなわち桜は、その美しい粧いの下にとげや毒を隠し持ってはいない。
自然のおもむくままにいつでもその生命を棄てる用意がある。
その色合いは決して華美とはいいがたく、その淡い香りには飽きることがない。

── 新渡戸稲造(『武士道』)