誉桜

誉桜

 

四月になりました。
川越では先週末より春まつりが始まりました。
土曜日はあいにくの雨、というよりも嵐のためまつりのオープニングセレモニーはほぼ中止。
日曜日は晴天に恵まれて、氷川神社裏の新河岸川では舟遊行事が行われていました。
桜は残念ながらまだ…でしたが。
でもようやく今日、咲き始めたようです。
今週末は満開かもしれませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんな新河岸川の桜は「誉桜(ほまれざくら)」と呼ばれています。
約三百本の桜がなぜそう呼ばれるのか。
それには理由があります。

時は太平洋戦争の頃。
川越の老舗和菓子舗「亀屋栄泉」当主・中島良輔氏がご子息二人を戦地へ送り出すことになりました。
彼らが帰還した折りにはその名誉を称えるため、満開の桜で盛大に出迎えようと、
ひそかに苗木を準備され無事の帰りを心待ちにしていました。
しかし戦況悪しく、惜しくもお二人は散華され、その身は二度と懐かしい
川越の地を踏むこと叶いませんでした。
失意の中島氏はそれでも気を取り直し、ご子息たちの御霊(みたま)を慰めるため
氷川神社裏の新河岸川河畔に三百本の桜を奉納し「誉桜」と名付けました。
毎春、河畔の桜は戦地に散っていった多くの御霊をお迎えするかのように咲き誇り、
清らかな犠牲を悼むかのように散っていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の大切な思い出とその季節の花が不思議と結びついている人も多いことでしょう。
春に咲く桜はその代表格の花かもしれません。
そういえば去年の春は震災後の影響もあり、ゆっくりと桜を愛でる心の余裕がありませんでした。
今年はどうでしょうか。
見る人それぞれにいろいろな想いがあるはず。

「春を楽しむように人生を楽しむ心があるならば、
やがてまた春のそよ風のように、心もやわらいで、生き甲斐も感じられてきます」

松下幸之助さんの言葉です。
私も、今があることに感謝をしつつ、今年の誉桜を楽しみたいと思います。